リーマンショックから始まった世界同時不況も、発信源のアメリカは、景気が持ち直して来ているというのに、日本はまだまだこれからどこまで悪くなっていくのか、という将来の見通しの立たないデフレスパイラルに突入し始めている。
 もちろん、デフレの時でも、好調な業界というのは存在するものですが、今回は、不況時でも比較的堅調といわれた業界をも飲み込もうとする深刻さである。

 そこで、どういう業界が深刻なのかちょっとネットで調べたところ、

不況に弱い業種→外食産業・家電・電機・自動車・金融

不況に強い業種→公務員・電力・通信・医薬品・ゲーム・たばこ・アルコール飲料・鉄道

が挙げられていた。まあ、外食産業のマクドナルドが最高益をあげていたり、分類は大雑把で、業界内の格差も大きいのであるが(激安で集客するなど)、おおむね、上の分類は妥当と思われていた。

 しかし、上の調査は1年ほど前のもので、2010年の現代の状況は、かなり異なってきている。特に民主党政権になってから、その状況はかなり変化してきているといって良い。

 たとえば、不況時は現実逃避に走るのと、オタクは金に糸目をつけないから堅調とおもわれたゲーム業界の売り上げ規模も年々縮小しているし、アルコールもビールでは無く、第3のビールなど酒税が低く安いものが良く売れているし、鉄道も、高速道路一部無料化で、乗客離れが起きている。電力だって、エコ関連で節電の方向だし、通信業界も値下げ合戦の真っ最中だ。

 そして、公務員業界も、俸給は、民間企業の給与の平均を参考に決められるから、同じように、引き下げが行われている状態だ。

 では、国立大学の事務職員はどうなのか。国立大学の給与表は、国家公務員の時代のものをまだまだ引き継いでいるし、人件費のほとんどが、国からの運営費交付金で賄われていて、先日の事業仕分けで、生命線とも言えるグローバルCOEなどの競争的資金の大幅な削減など、公務員以上に影響を受けている。しかし、国立大学業界は公務員不況に加え、さらに教育業界の不況にも立ち向かわなくてはならない時代になった。

 個人的には、かつて教育業界は不況と無縁であると思いこんでいた時期があった。というのも、子供にかける教育費は、他の経費を削ってでも、十分な教育を受けさせたいという面が親心として当然あると思っていたからだ。
 実際、生涯でかけるお金として、家、保険、教育、被服、食料、光熱費、娯楽費、耐久消費財、慶弔費、その他日用品等と大きく分類した中でも、特に私立大学まで通わせるとなれば、2,3番目に大きな割合を占める費用であり、あまり削りにくそうと思われる。

 しかし、受験生自身がそんな親心を察してか、教育費の節約に励んでいる。以下一例をあげよう。

・受験大学数の減少
  これは、主に私立大学にとって打撃であるが、いわゆる難関校の受験生の中で、あきらかに学力が足りないと思っても、「まぐれ」を期待するとか「記念受験」とかいう層があったのだが、検定料も1校あたり35,000円が相場なので、6校も受ければそれだけで20万円を超えてしまう。なお、安全志向の高まりか、いわゆる日東駒専と呼ばれる中堅校の志願者が増加しているというのは皮肉だ。

・地元大学への回帰
  自宅から離れて、下宿やアパートなどの新生活を送るとなると、かなりの費用がかかる。特に、名古屋などの中京圏の受験生は、東京か阪神方面の大学をあきらめ、地元志向になり、中京圏は受験生を増やしたが、東京、阪神方面の首都圏の受験生が減少した。

・塾・けいこ事を控える
    文部科学省の調査によれば、学校以外の教育にかけた「学校外活動費」が大幅に減少とのこと。特に大学受験へ力を入れていると思われる私立高校に通う子供のいる家庭では、
23.9%の大幅減とのこと。大学だけでなく、塾や予備校もこれからは大変そうだ。

・国立大学志望への転進
    これは、授業料と密接な関係がある。ずいぶん高くなったと酷評される国立大学の授業料だが、それでも私立大学に比べれば、まだまだ安い。国公立大学志向の高まりは、われわれにとっては順風だ。

 とはいえ、一部の私立大学もまた、あの手この手の対策を取り始めている。
 たとえば、
・授業料の値下げ(甲子園大学など)
・奨学金の充実(多くの私立大学)
・カリキュラムの専門学校化(就職に有利)
・公立大学への転換(高知工科大学、名桜大学(予定)など)

と、見てきたように、一般家庭もついに教育費の削減がいよいよ始まった今、これから、国立大学事務職員を目指すみなさんも、不況やデフレとも無縁ではありませんが、不況やデフレだから生かせる国立大学の戦術もあります。そして、不況を逆手にとって有効活用しようというアイデアも出てくることでしょう。採用試験の出願まであと2ヶ月を切りましたが、こんなチャレンジいかがでしょうか。