前回、予算を減らされたといった記事を書いたばかりだというのに、「文教ニュース平成22年1月4日・11日号」には、タイトルのような5.9%増(3,109億円)の見出しが踊った。「文教ニュース」は社内報のようなものなので、見られない方のために、同じような内容の文部科学省の報道発表をここに記しておく。

http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1288759.htm
(一部引用)
また、事業仕分けの評価結果を踏まえ、事業の廃止・縮減等の見直しを行う一方、マニフェストや総理指示にある教職員数の充実、大学奨学金の拡充や世界をリードする科学技術予算の充実などを図ることにより、5兆5,926億円、対前年度3,109億円(5.9%)の増額となり、過去30年で最高の伸び率となっています。
(中略)
国立大学法人運営費交付金については、前政権下において、骨太2006で決められていたマイナス1%の削減方針を撤回しつつ、医学部定員増に伴う教育環境の整備充実や授業料免除枠の拡大などを図ることとしています。


では、前回の記事はうそなのかというと、これにはからくりがあるからです。この増額の大半を占めるのが、高校の実質授業料無償化の予算3,933億円が大きいのだ。っていうか、もうお気づきだろう。増額分より授業料無償化の予算額の方が大きいではないか。これを除けば、実質文部科学省予算は減っているのも同然なのだ。

また、国立大学法人運営費交付金に目を向けてみると、医学部入学定員増に伴う教育環境の整備充実に13億円増、授業料免除枠の拡大に14億円増、地域医療のセーフティーネット構築のための体制整備等が79億円増となって、かなり増額されたのかと思いきや、「臨時的減額」など何故かスルーされて、全体では110億円の減額となり、結局、比率では、0.94%減という今までと変わらないような結果となった。大臣と記者とのやりとりを見てみよう。

http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1288871.htm
(一部引用)
記者)
個別の事業で国立大学の運営費交付金の話に先ほど言及されましたが、マイナス1パーセントには歯止めをかけたということですが、マイナス0.94パーセントということで、歯止めをかけたと言えば歯止めをかけたんでしょうけれども、110億円の減で0.06パーセント、結果前年度と変わっていないという、大学関係者にとってはかなり失望するような予算ではあるかと思うんですが、その辺どうとらえておられますか。

大臣)
できるならば多くというのは当然のことだと、印象として思いますが、1パーセント必ず減るというところから、そうではなくなったことは大きな意味があると思っております。

記者の方も我々の心中を察しているようだが、大臣は、臨時的減額の説明は一切なく、これは来年も再来年も続くのかどうか(恐らく続くのでしょうが)、1%減が0.94%減になりましたは、確かに納得出来る数字でないことは確かだろう。そして、「必ず1%減る」じゃ無くなったということは、「年によっては、1%よりも減額割合が大きくなる場合もありますよ」ということを暗に仄めかしているのかもしれない。
これから、大学事務職員を目指す皆さんは、国立大学の窮状を訴え、教員や上層部を動かして少しでも多くの予算を確保するのも仕事になるでしょう。事務職員でも、私立大学の職員のような、大学経営にも焚けた人材は大きな今後の大きなアピールになると思います。

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