todai国立大学法人職員の給与水準は、文部科学省のホームページに毎年度毎に公表されています。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/houdou/__icsFiles/afieldfile/2009/07/27/1282389_003.pdf (平成20年度分)

この国家公務員の全国平均を100として、国立大学職員の給与水準が相対的に数値で表したのが、「ラスパイレス指数ですが、これを見れば、一目瞭然、東京首都圏の国立大学でさえ、最高で96.6と、国家公務員の全国平均に届きません。しかも、この数字には、国家公務員の地域手当に相当する都市手当等すべて含んでの数字です。国立大学全国平均となると、86.7と、常日頃から引き合いに出している80台という数値になります。

まあ、私も国立大学職員が国家公務員の時代からの継承職員ですが、当時から国立大学の勤務は国家公務員の他機関と比べても給与が安いと感じていました。
ですので、法人化後のラスパイレス指数が80台だからといって、今さらそんなにびっくりするわけでもないし、法人化したために急に低下したという訳でもありません。

(平成20年度 東京都内の大学のラスパイレス指数)
 東京海洋大学     89.5
 電気通信大学     91.7
 東京農工大学     92.5
 東京芸術大学     93.0
 東京外国語大学    93.1
 東京学芸大学     93.2
 東京工業大学     93.3
 東京大学         94.5
 お茶の水女子大学   94.8
 一橋大学        95.1
 東京医科歯科大学  96.6
(国立大学法人等平均 86.7)

なぜなら、法人化後も一般職の基本給表などは、今でも国家公務員のものと同じものを準用しているからです。これは、国からの運営費交付金で賄われている関係上、上げることは、出来ないからです。
では、何故当時から他省庁等機関の給与との差がついているのでしょうか。実は、採用直後の段階では、国立大学職員と国家公務員との間では、ほとんど差がありません。

しかし、時間がたつにつれ、分かってくるのでした。国立大学職員は、かつて、昇進が異常に遅かったのです。結構年配なのに、主任だったり、係長だったり、課長補佐だったり、私の回りに沢山いました。

これは、どうしてかというと、課長以上の職、室長や次長、部長、局長などは、今まで、大学で採用になった職員(「プロパー職員」と呼びます)からは、昇進できなかったからです。プロパー職員は一番出世して、課長補佐や部局の事務長(課長相当)が最高到達点で、それ以上の役職については、文部科学省からの異動や全国異動課長(これはまたの機会に説明します)の指定席となっていたため、プロパー職員は級がなかなか上がらず、上げ幅の少ない号が年々積み重なる程度で、給与の上がり幅が少ないため、差がどんどん開いていったのです。(参考までに、上のグラフは東京大学の例です。なお、各国立大学はすべて公表しています)

ところが、国立大学が法人化して、状況が変化してきました。
今までは、国家公務員Ⅱ種以上の試験の合格者から、国立大学職員を採用していたわけですが、法人化後は、国立大学等職員採用試験という共通試験は行うものの、全国を7ブロックに分け、ブロックごとに各大学が2次試験を行い、直接採用する方式に変わりました。また、東京大学のように、自出身大学生採用を視野にいれた独自採用も行われています。

さらに、国家公務員時代からの採用と違って、法人化後に新たに考えなくてはいけない、経営理念とか、広報戦略、企画立案、国際戦略、英語力など、各大学が全力をあげて将来性のある優秀な人材を確保しようとしています。

ですので、これから、国立大学の職員を目指すみなさんにとっては、非常にやりがいのある活気のある職場と映ることでしょう。企画立案系の仕事が増えたり、環境改善の提案など積極的発言が求められるなど、やりがいもあって目標も持てると思います。

そして、法人化後は、以前なら38歳くらいまで、係長にはなれなかったのですが、今では、34~5歳位でなるような大学もあります。
課長や部長なども、プロパー職員からのステップアップとして席が用意されているところが多くなりました。もちろん、昇進試験などはありますので、年功序列でなれるものではありません。

また、いわゆる団塊の世代と呼ばれていた、1947年~1949年生まれの世代の職員が定年を迎え、つかえていた昇進も、進みはじめました。
以上から、給与の上がる速さは昔の国立大学よりは、早くなることが予想されます。その実感が無い方も多いとは思いますが、平成16年度以降の採用者は、まだ主任などの肩書きが付く人が少ないのと、リーマンショックによる世界同時不況によるデフレ経済のため給与の伸びの鈍化がシンクロしてしまったのが原因かと思います。

考え方によれば、この不況だからこそ、共済保険・年金による国家公務員並の安定性をバックボーンにしたうえで、非公務員型の能力・成果主義のやりがいを兼ね持った職場は、なかなか無いのではないでしょうか。

ここまでの話で、なんとなく、国立大学法人職員の給与はそんなに少ないわけではないことをご理解いただけたと思います。

法人化前  課長以上の職に就けない→給与頭打ち→他機関との格差広がる
法人化後  がんばれば課長以上に昇進可→昇給→期末・勤勉手当にも格差→国家公務員の水準に近づく(ただし、個人差は拡大する)

最近では期末手当、勤勉手当の支給に関して、各法人が、勤務成績や職務への貢献などを査定する仕組みを始めたところなどあるので、このあたりでも給与に差が付くようになってきてがんばりがいがあります。

とはいえ、運営費交付金には、効率化係数毎年1%がかかっています。人件費は、年々厳しくなり、効率化経営が求められています。業務の合理化など、国家公務員の時代には考えられなかった業務もつぎつぎと出てきています。これは、個人的にはとても面白いことと思っています。

と、記事を書いたところで、今日11月10日にとんでも無いニュースが飛び込んできました。
なんと、民主党が見直ししている事業仕分けに「国立大学運営費交付金」が対象となってしまいました。
果たして、このまま国立大学の教育・研究は衰退、大学職員の給与はやっぱり安いままなのか、次回、緊急特集です。