国立大学職員を目指す理由の1つに「転勤の少なさ」を挙げる方は結構多いのではないでしょうか。
昔は、国家公務員採用試験の合格者から、採用されていたわけですが、国家公務員は基本的に「全国異動」が建前です。
ノンキャリであれば、そんなに多くは縛られませんが、それでも若いうちは、引っ越しを伴う異動はあるかもしれません。
その点、国立大学事務職員は、国の時代から、「プロパー職員」は異動は基本的にありません。法人化してからは、さらに1法人1国立大学ですから、いわゆるそれぞれの国立大学が別会社です。なので、いったんどこかの国立大学に採用されれば、ずっとその大学に帰属するわけです。ただし、教員は別です。ほとんどの大学で、教員の任期制を取り入れているのではないでしょうか。あくまで、ここでは、事務職員にスポットをあてています。
ただ、1つの大学に帰属するとはいっても、実は落とし穴があります。
小さな大学であれば、1箇所しかキャンパスが無いことがありますが、大きな総合大学であれば、教養学部が別れていたりすることもあり、それぞれが近くないこともあります。
また、総合大学や理工系大学だと、研究所やセンター、実験所、観測所など、日本全国にちらばっていたり、それも人里離れた山奥や臨海など、交通の便の悪いところにあったりします。もちろん、すべての施設に事務組織があるわけではなく、配置されると決まっているわけでもありませんが。
それから、医学部があったり、附属病院を持っている場合は、病院事務室等への異動の可能性もあることを視野にいれておきましょう。
これとは別に、人事交流として、他大学や他機関へ異動するというのもあります。身上調書で、希望を出してかなえられる場合も、上司が勝手に話を持ってくる場合も、昇進の1つの手段としての場合などいろいろなケースで転勤になるケースもあります。形態は各大学で扱いがばらばらで、元の大学に籍ををおいたまま出向するケース、元の大学を退職して新たに採用されるケースなどありますが、基本的に、約束の年限がすぎれば、元の大学に戻れますし、多くの大学で、出向元の勤務通算年数のカウントをしてくれているはずです。(文部科学省への異動希望は後の機会に説明します)
法人化前は、出向を断ると、出世が遅れるということもあったようですが、法人化は特にその傾向は感じません。むしろ、自分のキャリアアップのために、外の空気を吸って、他の組織のやり方を学んで積極的に知見を深めるといったことに、戻ったあとは自大学に取り入れたりするなどそれなりに意義があります。そして、外との人間関係の繋がりも増えますので、今後の仕事の進め方のアイデアを練ってみたり、自大学ではわからないことを相談してみたりと、幅広い考え方が出来ます。
また、かつては、プロパー職員が課長以上になるには、40歳前位に国立学校・高専の課長登用試験を受けて合格し、昇進する代わりに全国の大学を異動することが行われていました。およそ2年毎に全国ブロックを異動となるので、課長にどうしてもなりたい人は、転勤だらけでも、それに耐えうる気力と体力を持っている人がなっていました。
しかし、今は、プロパーでも、内部昇進が多くなって来ましたので、これから、事務職員を目指す方には、良いでしょう。
先日の事業仕分けでは、文部科学省からの出向についても意見があったことから、今後がどうなるのかも目が離せません。
なお、いままで述べてきたこれらの説明については、各大学法人で定めている「就業規則」によって、実は大きく異なる場合があります。ですので、志望する大学が、どういうところに施設を持っていて、どのような異動の可能性があるのかは、ご自身で調べておいた方がいいでしょう。