公務員の再雇用、待遇厚く民間とは別世界(NEWSポストセブン2017年9月12日7:00配信より一部引用)

 政府は国と自治体合わせて約330万人いる公務員に「65歳完全定年制」を導入する方針を打ち出した。年末までに国家公務員法と地方公務員法の改正案をまとめ、来年(2018年)1月からの通常国会で成立、翌2019年から公務員の定年を段階的に延長し、年金が65歳支給開始となる2025年に「65歳完全定年制」を敷く。

 現在57歳の国家公務員(ノンキャリア職員)の平均年収は約804万円で、定年延長がなければ2020年に829万円で60歳の定年を迎える。ところが、定年延長で65歳まで勤め上げればその給与水準をほぼ維持したまま、ざっと4000万円ほどの生涯賃金が上積みされる計算になるのだ。  

なにかと、世間を騒がしているこの国家公務員65歳定年制延長であるが、そもそもの発端は、平成25年4月1日に施行された、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」がもとになっていて、定年に達した人を引き続き雇用する「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止などが基本になっています。 

何故かと言うと、公的年金の支給年齢が65歳からと引き上げられたため、定年を迎え無収入となる5年間の間の安定した収入の確保が必要ということで、当人が希望したら、そのまま希望どおり任用しなくてはいけないルールになっています。


国家公務員であれば、再任用制度→http://www.jinji.go.jp/shougai-so-go-joho/pdf/work/sai_ninnyou_seido.pdf 
国立大学法人であれば、それぞれの大学の人事関係規則で、再雇用制度に関する規則を定めていると思います。

ただし、今回の国家公務員の65歳定年延長については、再任用の場合、かなり条件が悪くなるようで、それを定年前の水準のまま、モチベーションを維持することが目的となっているようです。

実際、国家公務員の再任用の場合は、上のリンク先を見ると、給与は半減近くなるようです。また、仕事内容も単純労働が増えているということは否めません。最近の国家公務員の実態はわからないので、国立大学法人の場合の方を書きますが、入試関係の肉体労働系作業とか、構内の草刈りとか、物品の検収作業など、体を使うか、1日中同じところで単純作業を繰り返すかの内容が多いです。また、大学の再雇用も給与は半減しますが、ボーナスは年間2か月程度支給されるようです。

というわけで、制度はこれから整備されるので、どのような内容になるかわかりませんが、人事院のホームページで、以下のような資料を発見しました。ここにアップします。

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平成23年頃の資料のようで、古くて恐縮ですが、この時から、65歳定年延長は議論されていたようです。
ポストセブンの報道によれば、2025年には、65歳完全定年延長制を敷くとあります。この骨子の時も、平成37年度とありますから、2025年なので、この資料は結構合っていると思います。ただし気になるのが、給与は、60歳前の70%という部分。マスコミ報道では、そのままの水準で65歳定年を迎え、生涯賃金4000万円アップとか言っていますが、さすがにそれは無いと思われます。

国の財政が大赤字なのに、さらに公務員の歳出を増やすなんていう暴挙はないと個人的に思っています。
それは何故か? それは、誰も触れていない退職金の計算方法にあります。
退職金の計算は、「国家公務員退職手当法」によると第三条にヒントを見出せます。

第三条  次条又は第五条の規定に該当する場合を除くほか、退職した者に対する退職手当の基本額は、退職の日におけるその者の俸給月額(俸給が日額で定められている者については、退職の日におけるその者の俸給の日額の二十一日分に相当する額。以下「退職日俸給月額」という。)に、その者の勤続期間を次の各号に区分して、当該各号に掲げる割合を乗じて得た額の合計額とする。

この中で言いたいのは、赤文字にした部分。60歳時の月額俸給を仮に60万とした場合に、65歳定年時は42万しかないことになります。行政職(一)の定年退職者の平均退職金が2239.8万円ですから、その70%は1567万円で、672万円も少なくなります。

まあ、この予想どおりに規則が制定されるのか、特例を設けるのか、附則で対処するのかわかりませんが、現行規則がそのまま適用されると、自己都合でも60歳でいったん退職してがっぽり退職金をもらってから考えるという選択もあるかもしれません。ただし、再雇用制度は、定年を迎えた場合の年金支給までに制度であるので、自己都合退職の場合は、再雇用されないものと思ってください。

また、65歳まで定年延長になれば、年金支給年齢までの雇用だから、再雇用制度はなくなるんではないかという予想も外れると思います。65歳定年延長となれば、年金支給は70歳から、いや75歳からということもありえますので、そんなに甘くありません。


というわけで、長々と、よくわかりもしない、国家公務員のことを書いてしまいましたら、それでは、国立大学法人職員はどうなのかと言えば、よくわからないというのが答えです。
ひと昔前なら、国家公務員の名残で、規則もそのまま流用して、ほとんど待遇が変わらないというのがあったので、国立大学法人も横並びで65歳定年延長制を導入するんじゃない? って軽く言えたのですが、さすがに法人化後10年以上経っても変わらない体質の国立大学に対し、文部科学省の方で、独自の取り組みをいうものを推し進めていて、いろんな意味で横並びの体制は崩れて来ています。

そんな中で、じゃあ、大学名は明かせないがうちの大学はどうなのかと言えば、まだまだ国家公務員の規則を引きづっているところもありますが、無期雇用制度の規則整備は、国家公務員規則に似たような制度はあるわけがなく、ここは労働基準法が適用される国立大学法人ならではの制度が確立し始めました。
なので、国立大学法人が65歳定年延長に踏み切るかどうかは、大学ごとの判断にゆだねることになりますが、体力にある大学は、もともと教員が65歳定年制なので、それにならって65歳定年制を事務職員にも導入すると思われます。ただし、給与はもともと国家公務員よりラスパイレス指数を考慮すると15%くらい少ないうえに、60歳からの70%支給も取り入れると思います。(下の図の役職定年制も導入すると思う)つまり安い賃金で、常勤職員を維持できるという利点もあるわけですが、反面、新卒などの若い人材の雇用を妨げます。
これをどう見るかにもよりますが、そこは、法人ごとに考えが違ってくるでしょう。
法人運営費の比率は、今後どんどん下がっていくと思われるので、プロジェクト経費を多く獲得する大学ほど、今後は給与の面も優遇なんていうことがありえるので、ますますその傾向は強くなります。 

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