平成25年4月1日からの、改正労働契約法によって、通算で5年以上労働期間があれば、本人が、無期雇用を希望した場合は、雇用側は、拒否することなく無期転換の雇用にしなくてはならなくなったのだが、国立大学は、基本的に、運営費交付金という、税金で人件費を含め運営しているため、なかなか財源を未来永劫にわたって約束するのは難しいという面もある。
もちろん、運営費交付金だけでなく、競争的資金を確保したり、産学連携で民間との共同研究や受託研究を推し進めたり、寄附金を募ったりしてして、財源の確保に努めてはいるのだが、やはり、プロジェクト期間が長くても6年とか、やはり期間が限られているので、どうしても、有期雇用の労働契約にしなくてはならない面もあるのだ。

そして、走行しているうちに、もうすぐ4年が経とうとしている今、このようなビラが配られている。そう、もう5年の雇用期間満了まで、あと1年とわずかしかない。

stop雇い止め 配布用
 このまま行くと、再来年の3月末で、今働いている非常勤職員さんたちが一斉にいなくなります。これは確かに困ります。今や非常勤職員さんとはいえ、ほとんど常勤さんと同じような働きもしているし、国際会議の運営などのノウハウも蓄積していたりして、急に人を新しくしたところで、回る物でもないのだ。
ならば、無期雇用にすればいいとはいっても、前置きで述べたように、財源の問題もあるし、ほとんどの大学で、雇用限度を5年として再雇用できないような、規則になっている。

 つまり、雇用の安定を狙った法律のはずが、雇用を5年ポッキリで終わらすような、本来の目的と違う運用を強いられてしまっているのだ。では、この分かってる問題にどう立ち向かえば、いいのか?
人事担当副学長に質問したこともあるのだが、まったく何も考えておらず(任期が切れたあとのことだからか?)、対策すらも立てていないともことだ。

では、どうすれば、法律にも触れず、雇用者もハッピーになることができるか、個人的に考えてみた。

1.近隣の国立大学の非常勤職員と総取り替えする。
 国立大学は、高専と違って、1大学1法人なので、大学が違えば、法人も異なる。つまり雇用者が違うので、他の大学の非常勤職員をそのまま取り替えるという大胆な作戦だ。幸い、大学はことなっても、もともとは職員は公務員だったので、仕事の内容は、根本的には大きく異なることはない。
とはいえ、それは、人事や経理の関係であって、研究部門や教育企画系になると、戦略が異なるので、かなり違うかもしれない。

2.早めに半年間の長期ブランクフォーメーションを組む
 同じ大学でも、半年開ければ、通算雇用期間がリセットされ、新規採用という扱いに戻る。一斉にいなくなるより、早めに半年間ずつ、他の大学の人事交流などの制度を使って、収入は途切れないように、考慮する。
でも、半年間は、慣れない仕事につくか、完全に休業するかのどっちかなので、あまり良くないかも。

3.派遣会社の職員となって、同じ大学に派遣され、派遣社員として働く
 これが一番現実的かも。雇用者は大学ではなく、派遣会社だから、おなじ職場であっても、雇用主が異なるから、法には触れないはず。とはいえ、派遣会社がその辺の事情を汲んで、同じ職場に派遣してくれるか不明。しかし、清掃会社の年間契約など、会社が変わっても、同じ掃除のおばさんが、会社の制服だけ変わって、そのまま掃除しているのをみかけるので、この仕組みを利用しているのかもしれない。

4.もう大学には任せておけない。国立大学非常勤職員専門の派遣会社を設立してしまう
 これは、結構、先生たちが真剣に考えている。やはり、先生にとって、研究室秘書さんは頼れる存在。とはいっても、無期雇用にするには、研究費がもらえる期間が決まっているから、その期間だけ勤めて欲しい。もし、続けて勤務したければ、情報を蓄積している専門の派遣会社が、同じ研究を行っている他の研究室や他の大学の秘書さんとして、派遣を行う、両方のニーズをマッチする方法と思える。

とはいえ、3も4も、派遣会社という組織になると、その会社が利益を得ないといけないので、同じ仕事の内容でも、同じ給与額を保証するのは難しいかもしれない。

5.マスコミを利用して、大々的な問題をアピール。改正労働契約法が、本来の目的とは異なる事態になっているので、法律自体を変えさせる。
 今まで、この労働契約法が改正しなかったら、特に問題は起きていなかった。大学という教育研究機関にこの法律をそのまま当てはめてしまうことに、大きな問題があるのだ。
その例の1つが、プロジェクトの研究員や教員であれば、プロジェクト期間が5年で終わることが少ないことから、最長10年間という特例を設けたのだ。わずか1年で法律がかわった。
つまり、もうちょっと大きな声をあげれば、大学という、民間の手法とは異なる特殊な事業を理解してもらい、大学の非常勤職員も、特例を設けることができるのではないかと。

そもそも、大学は、国家が繁栄や存続、危機管理など、大きな役割を担っているというのに、その教育や研究力を低下させるような、政策を国がやってはいけない。どうにかして、教員の教育・研究を行ううえで、その縁の下の力持ちである非常勤職員の方が気持ち良く、労働できるような環境を守って欲しいと切に願っています。