「週刊東洋経済」(2009.10.24号)の記事によれば、国立大学附属病院の経営は、法人化後の「経営改善係数2%」導入により、極度に経営が悪化している病院が増加しているという。
これは、国立大学の運営交付金1%の効率化係数とは、別に、附属病院の病院収入は、外部資金として自助努力としてがんばりなさいという意味で、2%と係数が大きくなっているのだ。

それに呼応するように、各附属病院も施設をきれいに改修したり、コンビニを誘致したりして、患者さんに喜ばれる努力をし、ここ5年間で、急患搬送件数は倍増、分娩件数38%増加、そして診療報酬請求額は、22%アップと実績を上げてきた。

ところが、2006年度の診療報酬が改定となると、看護師等の争奪戦が始まり、医師も自分で病院を選べるので、国立大学附属病院間でも格差が生まれる状況となっている。特に地方の附属病院ほど深刻な状況となり、本来中核病院とならなければならないのに、その機能を果たすことが困難になっているというのだ。


国立大学附属病院のキャッシュフロー推移(全46病院)

          黒字病院      赤字病院
2007年度   18病院(59億円)  28病院(▲135億円)
2008年度   16病院(27億円)  30病院(▲136億円)
2009年度   13病院(41億円)  33病院(▲197億円)

(参考)週刊東洋経済2009.10.24号


とまあ、前置きが長くなったが、なぜ長々と現状の説明をしたかというと、もし、国立大学の事務職員を目指すのであれば、附属病院の事務職員として配属される可能性もある、ということを肝に銘じて欲しかったからなのだ。国立大学の附属病院は、厚生労働省の管轄ではなく、文部科学省の管轄です。従って、国立大学法人等職員採用試験を経て事務職員が採用されるのです。

そして、前置きに述べたような現状を認識したうえで、それでももっと経営を改善したい、もっともっと患者さんのことを考えて環境を変えたい、私ならこんなアイデアがある、など高い志を持った方は、是非とも病院の事務を目指して欲しい。

さて、それとは別に、意図せず病院事務に配属されて、「これは大変なところに配属された」とうつに感じている人もいるでしょう。特に病院の医師は医学部の教授、准教授・・・であり、事務職員は、かなり蔑まされます。(中にはフレンドリーなお医者さんもいらっしゃいますが)。また、病院事務特有のレセプトの処理の件数は多く、超過勤務も病院以外の大学事務と比べてかなり多めです。

それなのに、病院の事務職員は、筆記試験も面接試験も特段区別が無いので、本人が、学務系の仕事を希望しても定員の関係で、病院事務に配属されちゃったりするわけです。

今は、ミスマッチをなくすべく、なるべく本人の希望に添えるような配属や人事異動を行うようですが、全ての希望はかなえられる訳ではありません。ただ、自分に合わないな、と思った仕事でも、年に1度「身上調書」なる書類を書かされるので、ここで、自分のやりたい仕事や希望をしっかりとアピールすれば、上層部も考えてくれるでしょう。

「身上調書」のうまいアピール方法や、これがあると有利な点の情報は、またの機会に紹介します。今は「身上調書」の季節ではないので。(例年5月頃にあります。なお、やってない大学もあるかもしれません。)

まあ、病院事務職員をどうしてもやりたくない、というのなら、始めから医学部や附属病院を持っていない国立大学を狙いましょう。採用されれば、基本的に各国立大学間で法人が異なるので、希望しないのに、他大学へ転勤になることはありません。
ただし、国立大学間で、人事交流を行っているところもあるので、その交流先に附属病院があって、配属される可能性は残ります。あなたが候補になった人事交流を断ることも出来ますが、人事記録的には、上司の推薦を断ることになるのでアピール度が低下することは否めませんよ。