これは、ちょうど1年前くらいに、国立大学授業料値上げの議論が起こったのですが、その理由が、「国立大学に通う学生は学力が高い。それは、塾や予備校に通わせられる富裕層が多いからだ。従って授業料を値上げしても構わない」という、乱暴な理論に基づくものでした。
ところが、その後、リーマンショックによる世界同時不況が訪れるや否や、世の中の小売り業界などは値下げ競争のまっただ中にあり、今やそんな議論があったことすら今や忘れさられようとしている。
しかし、国立大学は、平成16年度に法人化を迎えるに当たって掲げた第1期中期目標・中期計画が今年度6年目の最終年度を迎え、来年の平成22年度からの第2期中期目標・中期計画を立てなくてはならない時期に来ている。この計画の中で、授業料をどうするかということは、即、大学経営に直結する話なので、安易に値上げや値下げを計画するわけにもいかないのだ。
国立大学は、教育の機会均等という使命から、標準額が定められており、各国立大学法人は、値上げをするにしても法人とはいえ、標準額の110%までという縛りは確かにある(その代わり下限は無い)。だが、個人的見解としては、この経済の情勢下で、値上げを計画するのは難しいと思われる。
「国立大学の真実 その5」http://blog.livedoor.jp/tenkoe/archives/51421995.htmlでも触れたが、経常収益に占める学生納付金の割合はたった13.5%で、しかもその数字には、入学金も含まれる。これだけ割合が少ないのなら値上げ?という考えも起きるでしょうが、上の図を見てもらえれば、おわかりのとおり、消費者物価指数は平成21年を100とすると、昭和50年は55で、2倍にもなっていない。対して、授業料は、平成21年が535,800円に対し、昭和50年は36,000円と15倍にもなっているのです。こんなに、物価上昇率の高いものは、他にはあまり見受けられません。なぜ、こんなに急上昇したのかというと、当時の私立大学の授業料に合わせて格差を埋めるという観点からでした。
そんなわけで、国際的に見ても、日本の大学の授業料はあまりにも高いことがわかります。
欧州諸国は、教育は、公共的なサービスをいう考えがあります。国民の学力がアップすることは、国力の増強、強いてはGDPを押し上げるという考えです。これを税金で支えるのは、当然で、貧困層でも十分な教育が受けられます。
今、日本でも民主党政権で高校の実質授業料無償化を押し進めていますが、大学までもが授業料の無償化への検討の時期がきているのかもしれません。
ただ、授業料を無償化しても、大学の自助努力だけでは、この経済化の状況の中、外部資金の獲得はままなりません。
民主党政権はこども手当に力を入れているようなので、それなら最後まで面倒を見るべく、国立大学の法人運営費(運営費交付金)を大幅に増額すべきと考えます。
大学の授業料を無償化している主な国
ドイツ、フランス、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェーポーランド、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、ルクセンブルグ、チェコ、スロバキア・・・等